第263章

前田南の口に詰められていた物は、望月時也によって引き抜かれた。望月時也は何も言わず、前田南もまた何かを言う気にはなれなかった。

しかし次の瞬間、二人の男が彼女の体を持ち上げた。

彼女に見えるのは頭上の空だけ。月は満月で、周りでは風がびゅうびゅうと唸りを上げている。

どれくらい歩いたのか、風がますます強くなっていくのを感じた。潮風だ……。

前田南の心に、不吉な予感がこみ上げてくる。

望月時也たちは、まさか自分を海に投げ込むつもりじゃないだろうか?

以前にも一度投げ込まれたことがあるのに、まただ。

しかもこんな夜更けに。今度こそ本当に海で死ぬことになるのでは?

前田南はパニックに...

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